若き数学者のアメリカ,を読む

 

若き数学者のアメリカ
新潮社 (2013-07-01)
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前々から本の存在自体は知っていたのだけど,実家の掃除をしているときにたまたま本棚にあるのを見つけたので読む.用事でサンダーバードで京都まで往復した+京都のバスで読んだ感じだった.とりあえず大学院生ぐらいの人にはオススメしたい.70年代アメリカの話であるが,この本に語られているような著者視点からの話というのは現代でも色あせていないと思う.思わず著者視点に感情移入してしまうものね.

個人的に面白かった場所を3つほど引用.

さて、我々のセミナーに話をもどすと、そこでは、さすがに題目で人を驚かそうとしたりする者はいなかったが、なかにはどう考えても、くだらんと形容するしか他にないような講演もあった。ただし、こういう講演を馬鹿にして欠席したりするのは、あまりよくない。講演者に対しても失礼であることは世界共通であるうえ、このようなくだらないと思われる講演が、ときには失われた自信を取り戻す契機になったりするのだから。毎回毎回、素晴らしい研究成果ばかり聞かされていたら、瞬く間に自信喪失に陥ったうえ、深刻なノイローゼになってしまうだろう。


どうしてアメリカに素直に融け込めないのか、どうして疎外感から抜け出せないのか、懸命に考えてみた。「性に合わない」と言えばそれまでだろうが、それでは満足のいく答えになっていない。
まず第一に考えたことは、親しい友達、特に女友達を持つことが出来ないからではないかということだった。


「この海の向うに何があるか知って居るかい?」
「この海の向うに?」
彼女は突然の奇妙な質問に、そう言ったまま黙り込んでしまった。しばらくの間、何かを探すように海を凝視していた。私自身、なぜこんな質問を考えたのか分からなかったが、二人で海を眺めていたら、それが急に思い浮かび、このセリーヌには絶対に聞いてみなければならないと思ったのだ。潮風に柔らかな髪が揺れると、陽に焼けた肩が見えかくれした。と、長いまつげを二、三度瞬いて私を見つめると、
「horizon」
とだけ言った。私は意表を衝かれてうろたえた。何と美しい言葉だ。

 
Kindle化されているので,気楽に読めるエッセイという点でも評価できる.

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